いつか合気道の道場を設計したい
建築家のブログ

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-2012.2.24-

木造住宅に設けた音楽室の問題点と解決方法

FORMAで設計した音楽室の一例を紹介します。これから木造住宅に音楽室を作る方の参考になれば幸いです。

 

こんにちは、京都の設計事務所 FORMA(フォルマ)建築研究室

「建築を通して円満を伝える合気道建築家」中西義照です。

 

 

■音楽室のある家

 

構造:木造3階建て(準耐火構造)
構成:2世帯住宅(1F:親世帯/2-3F:子世帯)
防音室設置階:2F
楽器:オーボエ2台、ピアノ(アップライト)

 

ひと言で「音楽室」といっても簡易なものから高性能なものまであります。建築の構造体の基本性能に依存する場合もあるので、高性能な防音室を求める場合は、構造体や設置階、位置をよく検討することが大切です。ですが、全て理想の条件が揃う場合は稀なので、その中で何を選択し、何を切り捨てるかが難しく、大事なポイントになります。

 

自分で設計しておきながら言うのも何ですが、防音室としてはハードルが高いと感じました。

 

【問題点】

1.建築躯体が木造
2.設置階が2階(階下は生活時間帯が違う母が暮らす)
3.他の空間との一体性を持たした防音室としたのでガラス部分が大きい

 

住まい手の要求にお応えするためには、この3つの問題点から逃げることなく、真正面から取り組むことになりました。世の中には防音を専門にしている会社もあるほど奥の深い部分なので、建材メーカーの防音専門の担当部署とともに計画しました。

 

 

【住まい手との要求事項のすりあわせ】

 

・夜遅くの練習はしない
・内部空間への若干の音漏れは許容する
・外部への音漏れは無くしたい。

 

まずは演奏楽器の発生音の想定。ピアノ、オーボエで95dB(デシベル)~100dB。身近な騒音レベルのデータが有りこれを採用しています。

遮音性能として、55dB程度を目標とすることになりました。55dB程度とは人の声に例えると、ささやき声、小さい声、というレベルです。

 

但し、これは外部に対しての性能で、防音室の内部に面する窓の大きさによっては遮音性能は落ちます。窓部分については部分的な性能を検討するために机上検討を行い性能と費用を検討し選択しました。また、音という主観的なもののレベルを共有するために、協力メーカーの防音室で、外部に漏れる音や防音換気扇の性能などを体感してもらいながら共通認識をつくっていきました。

 

防音室のカットモックアップ

 

【問題点の解決方法】

 

1.建築躯体が木造

 

取り組みとしては、躯体を通じて感じる伝搬音を低減する工法を用いました。伝搬箇所は床、壁、天井、設備配管等です。要は音の伝わりを無くす事が主題となります。

床についてはピアノのペダル等の衝撃が大きそうなので防音室より大きい面積(2F床全て)に厚み20mmの遮音シートと吸音のグラスウール層が50mm(床を浮かせています)、遮音シート、下地の24mm合板と、仕上げ床材30mmが有ります。床だけで厚み160mm近くの構成です。

 

壁は、外部側からグラスウール・石膏ボード・遮音パネル・吸音グラスウール・石膏ボード・遮音パネル2枚貼り、仕上材と柱の厚みを除いて170mmの構成です。天井は、吸音グラスウール・石膏ボード・遮音パネル・吸音グラスウール・石膏ボード・遮音パネル2枚貼り、仕上げ・吸音天井材でと170mmの構成です。

 

構造躯体から切り離して内部に室を浮かせた状態で作るようなイメージです。躯体からの伝搬音を低減し遮音を兼ねた施工法を机上でシミュレーションして選択しました。

 

 

2.設置階が2階(階下は生活時間帯が違う母が暮らす)

 

二世帯住宅の上部階に防音室があるという点については以下のような対策を考えました。

・1Fの寝室と防音室を離しパブリック部分の上部になるように設計。
・伝搬音を少なくするために2F床全てに遮音ボードを敷き詰め、仕上げ材料も厚いもの(30mm)を選択

 

完成してからお話を伺いましたが、1階でも問題ないレベルということでした。

 

 

3.他の空間との一体性を持たした防音室としたのでガラス部分が大きい

 

子世帯内部への若干の音漏れは許容するとの事でしたが、出入り口扉は遮音性能45dBのスチール製の扉(これが重くて搬入が大変でした)とし、窓は厚みを変えたガラスで大きい空気層をとる事で性能低減に対処しています。厚みを変えるのはコインシデンス効果(共振によって音が透過しやすくなる現象)防止対策のためです。

 

窓を設けない方が防音室としての性能は上がりますが、音楽室のある家では暮らしと一体感のある開かれた音楽室というコンセプトです。防音性能よりも空間のつながりを選択したわけです。

 

 

防音室と言えば遮音性能を満足するために追究するイメージが強いですが、住宅の中にある防音室というのは住まい手のライフスタイルや使い勝手が様々なので多様な展開があるのかもしれません。

 

 

【施工段階の注意】

 

工事段階では丁寧に隙間なく施工することが非常に重要となります。エアコンや換気扇、電気の配線の穴、ドアや、二重窓の取り付け等は遮音の弱点です。壁はしっかり施工できていてもエアコンの外部への配管が別工事だったために外部に音が漏れるというのはよく聞く話です。換気扇についても天井換気扇の配管にサイレンサー(消音装置)をつけたり、外部のフードがサイレンサーになっているものがあり、遮音性能値が記載されているものだと安心して使用できます。

 

設計者、工事管理者、職人さん、監理者、それぞれが求められる性能を共有し、それぞれの分野で細やかな配慮を行い施工することが不可欠です。

 

防音室の工事前の様子
防音室の工事の様子

 

【コスト】

 

気になるコスト(工事価格)は、4.5帖の大きさ天井高2.3m(遮音性能55dB)で部材、ドア購入費、大工さんによる施工費を合わせて約120万円になりました。(設備機器の設置を含めてもプラス5万円程度)

単位面積当たりの価格で言うと16万円/㎡(53万円/坪)という結果でした。

 

 

防音室を作るだけではなく、暮らしとどうつなげて、ワクワクし発展性のある音楽室がアウトプット出来るかがボク達の関わる理由です。

 

楽器を演奏したい、オーディオルームを作りたい、趣味をとりいれた楽しい家を作りたいと思われる方はお気軽に連絡してきてください。

 

待ってます!

 

 

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京都の設計事務所 FORMA建築研究室 「建築を通して円満を伝える合気道建築家」 中西義照(てる)でした。^^

 

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