合氣道建築家のブログ

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-2025.9.9-

“新耐震基準の家だから安心”は本当でしょうか?築20年の家を耐震診断した結果

「うちは2000年代に建てた家だから大丈夫」というのは、本当にそうでしょうか?

2018年に発生した大阪北部地震では、震源に近いエリアで大きな揺れがあり、多くの住宅で被害が出ました。

その後、「うちの家、大丈夫だろうか?」というご相談をいただいた中から、2003年築の住宅における耐震診断の事例をご紹介します。


◆ 2003年築でも「倒壊する可能性が高い」と診断されるケース

ご相談をいただいたお宅は、旧耐震基準(1981年以前)ではないにもかかわらず、「家の安全性をきちんと確認しておきたい」というお気持ちから耐震診断をご依頼くださいました。

結果は、次のとおりでした。

【耐震診断結果(評点)】

階層X方向Y方向
1階0.63(倒壊する可能性が高い)0.74(倒壊する可能性がある)
2階1.26(一応倒壊しない)1.13(一応倒壊しない)

最低評点 0.63(倒壊する可能性が高い)

これを見て驚かれる方も多いと思います。2000年代以降の住宅であっても、耐震性能が十分でないケースは現実に存在するのです。


◆ なぜ評点が低くなるのか?原因は「劣化」と「間取り」

この建物で評点が低くなった主な理由は以下の通りです。

  • 地震による外壁のひび割れなどの劣化
  • 二間続きの和室などによる開口部の偏り(耐力壁が少ない)
  • 上下階で壁の位置が揃っておらず、バランスが悪い構造

つまり、設計や間取りの特徴、築年数による劣化の有無によって、同じ年代の建物でも大きく耐震性能が異なることがわかります。


◆ 「新しい家だから大丈夫」は過信かもしれません

耐震基準は以下のように段階を経て強化されてきました。

  • 旧耐震(〜1980年)
  • 新耐震(1981〜1999年)
  • 2000年基準(強化新耐震(2000年〜)

2000年以降の建物でも、設計や施工の内容次第では基準を満たしていないこともあるのです。とくに大きな地震を一度経験した建物では、新築当時は問題がなくても、劣化によって耐震性能が低下している可能性もあります。


◆ 耐震診断は「今の家の健康診断」

まずは、今の家の状態を知ることが何よりも大切です。以下の方法で耐震性能を確認することができます。

  1. 建てた会社に、当時の耐震目標や設計意図を確認
  2. 構造図や設計図を見れば、建築当初の性能がわかる
  3. 書類がなければ、私たちが耐震診断を実施

とくに③の耐震診断では、現在の劣化状況や構造的な偏りを可視化できます。これは、改修工事の方針を決めるための非常に重要な資料になります。


◆ 既存住宅の耐震改修は「合理的に、現実的に」

既存住宅の場合、改修の目的やコストに応じて、どこまで性能を高めるかを相談しながら決めていきます。

今回のケースでは、今後のリフォームに合わせて耐震補強を実施する予定です。また、短周期地震に備えた制震ダンパーの設置も検討しています。


◆ まとめ:今の家の「本当の強さ」を知ることから始めましょう

  • 2000年代の住宅でも倒壊する可能性が高い判定となる建物がある
  • 耐震性能の目標値を設定し、それに近づける
  • まずは今の家の状態を知ることが第一歩
  • 耐震診断は、将来の安心のための「根拠」となる

耐震性能は、「新しいから安心」とは限りません。
本当に安心できる住まいかどうかは、知ることから始まります。

ご自身の家やご両親の家など、気になる方はぜひ一度ご相談ください。

【ご相談はこちらからどうぞ】

達人塾 井戸田教授の評点と被害の関係がわかる表