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建築家のブログ

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-2016.4.12-

地盤改良が要るかどうかの判断はどのように決められているか?

地盤改良は書いて字のごとく建物の建つ敷地の地盤を改良する事です。
地盤改良工事を行うかどうかは地盤調査を元に設計者や地盤工学専門家の判断に委ねる事になりますがどのようにして判断するのでしょうか?

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判断のもとになるのは地盤調査です。
調査方法には、

□スェーデン式サウンディング 

住宅建築の場合一番多く行われている調査方法です。
標準貫入試験のN値に準じる「換算N値」を算出することのできる換算式があります。
土質のサンプリングは出来ません。
土質判定は地形分類図(土地条件図)」によっても、おおよその土質の判別が可能です。ロッドから伝わる感触や音も合わせて判定します。
地下水位もロッド穴にスケールを差込み測定する事が可能です。
測定者の習熟度によって結果にバラツキがあることは否めませんが最近ではセミオートマティックでパソコンが搭載された調査機械があるので心配ないかもしれません。
費用は測定箇所が5か所が標準で3万円前後、測定箇所が増えると追加となる場合が多いです。

写真 2015-10-08 9 59 06

□ラムサウンディング

オートマチックラムサウンディング試験は動的コーン貫入試験の一つで、調査方法が比較的簡便でN値50程度の貫入能力があり、200mm毎のデータ(Nd値)を連続的に得ることができます。また、Nd値と標準貫入試験のN値には高い相関性が認められています。
土質のサンプリングが出来ません。
費用が5万前後 標準貫入試験に比べると安価なため補助調査として用いられる場合が多い。

□表面波探査法(レイリー波

表面波(レイリー波)伝播速度(≒S波速度)の変化を利用する探査です。
起振機により、地震波を人工的に地中に流します。その発生する表面波をA-B間で検出する事で、地層の構成や硬軟を把握します。
探査以外の地盤情報が乏しいときはボーリングなどから調査地全体の地盤構成がより正確に把握できます。
費用が5万円前後( 他の調査と併用する場合が多いので他の調査費用加算がある)

□標準貫入試験
住宅ではあまり使いませんが大規模な建築、鉄骨造、RC造、杭の設計が必要な場合はこの方法です。
N値が分かる。土質のサンプリングが出来るので乱さない資料による圧縮試験や粒度試験等が行える、液状化判定も可能です。
費用は10万円以上(調査深度により加算有ります)

住宅はほぼスェーデン式サウンディング(SWS)調査を行っています。
費用が安い、手軽、狭い場所でも調査が可能という事。小規模建築物基礎設計指針(日本建築学会)にも記載され、JIS規格にも制定されている事も理由だと思います。

SWSで見るところはqa=30+0.6Nsw (kN/㎡) から求められる許容応力と換算N値及び層圧と設計必要地耐力の比較となります。
次は自沈層の有無と層の厚みを考慮して改良の有無を導き出すのです。

自沈について
平13国交告1113号によると、SWS試験において、基礎底面から、2m以内に1kN以下で自沈する層がある場合、もしくは、基礎底面から下方2mを超え5m以内に500N以下で自沈する層がある場合は、建物自重による沈下、その他の地盤の変形等を考慮して、建物に有害な損傷、変形、及び沈下が生じないことを確認するとなっています。

地盤の長期許容応力度と混合しがちですが、建物の自沈は地盤の長期許容応力度とは別に検証しなければなりません。

□計測点全てで自沈層が全くない
計測点(4箇所以上)全てで自沈層が全くない場合、地盤の長期許容応力度が30kN/ゴ以上あると考えられる。
また、不同沈下の恐れも少ないと考えられることから布基礎で対応してよい。

□計測点全てが「0.75kNゆつくり自沈」以上の場合で、各計測点のデータがほぼ均一
計測点(4箇所以上)全てにおいて、計測項目の荷重(Wsw)が「0.75kN」であり、貫入状況が「ゆっくり自沈」以上(急速自沈がない場合)で、全ての計測データがほぼ均一の場合、沈下が生じても等沈下となるので、べた基礎にて対応してよい。

□深さ2m以浅に「0.50kN自沈」以下が合計して50cm以上ある
計測点の一箇所でも、基礎底面を基準として2m以浅のデータに「0.50kN自沈以下」が合計して50cm以上ある場合は、表層部の支持力と圧密沈下に問題があると考えられる。
このため地盤改良や基礎杭などの対応をおこなう必要がある。

□深さ2m以深10m程度の間に「0.50kN自沈」以下が連続して100cm以上又は合計で200cm以上ある
計測点の一箇所でも、基礎底面を基準として深さ2m以深に「0.50kN自沈J以下が連続して100cm以上又は合計で200cm以上ある場合は、深層部に圧密沈下の問題があると考えられる。
このため基礎杭や柱状改良などの対応をおこなう必要がある。

このような判断基準が設けられています。

実際は調査してみると敷地によって結果は様々です。
基本は上記のような判断指針に基づきますが、過剰となったり、他の方法の選択が可能なケースも有ります。

FORMAでは上記の指針を踏まえて調査会社、設計者、構造設計者の経験や知見を基にして地盤改良が必要か、改良が必要な場合はより個別の状況に即した過剰とならない補強方法を検討します。
そして敷地の状況、建物の構造規模、クライアントの意向に応じた提案を行っています。