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-2025.10.2-
その文化が、そこに暮らす人々の“幸せ”や“平和”とどのようにつながっているか。なぜ移動式文化祭?
豊岡演劇祭にあわせて開催された、豊岡カバンストリートにあるクリエーターのためのアトリエapartmentで開かれた移動式文化祭に行ってきました。
音楽、展示、演劇、インスタレーション、、、
文化祭にはいくつかの公演がありますが、今回はパリで活躍されている奥野衆英さんのパントマイムを、解説を交えたシアターカンファレンス形式で観てきました。
奥野衆英さんのパントマイム「BLANC DE BLANC 」との出会いは、2年前の豊岡演劇祭でした。はじめての本物のパントマイムに感動して以来、日本公演を楽しみにしているのですが、今回は、移動する文化祭がどうしてここに立ち上がったのか?そこにとても惹かれました。

以下、移動式文化祭《The Apartment(ジ・アパートメント)》https://www.obungessha.com/bunkasai2025_kaisai.html
なぜ、移動式文化祭?
このプロジェクトは、「文化は誰のためにあるのか?」という根本的な問いから生まれました。
2023年、2024年と、演劇祭のためにフランスから豊岡を訪れたアーティストの奥野衆英は、この地で作品創作と上演を重ねるなかで、「なぜこの街には文化を届ける場があるのに、人の気配がまばらなのか?」という小さな違和感を抱くようになりました。
公演はあっても、人々の姿は少ない。文化がそこに“ある”のではなく、たった数日で“通過”していくような印象すらある。
そんなある日、商店街の方から「そんなお祭り、あったんですか?」と声をかけられ、奥野ははっとします。なんとそのお店は、自分がずっと舞台に立っていた会場のすぐ目の前だったのです。
「自分のほうが、この街の文化とちゃんと対話できていなかったのかもしれない」。
その気づきは、パリに戻っても彼の中で静かに残り続けました。それは、彼が長年身を置いてきたフランス、とくにアヴィニヨン演劇祭での経験とは、大きく異なるものだったからです。
この思いを言葉にしたとき、最も強く共鳴したのが、カバンストリートのアトリエ《Apartment》のオーナー下村浩平でした。文化が「根づく」ことだけでは足りない。その文化が、そこに住む人にとって、持続的な“幸せ”や“平和”につながっているかどうか。舞台芸術もまちづくりも、その問いから逃れられない。
この共通の視点から2025年、わたしたちは演劇祭の公式プログラムから少し距離をおきながら、より身近な文化の交差点として、そして誰もが立ち寄れるもう一つの入口として、「ここに文化があってよかった」と感じてもらえる場を自分たちの手で立ち上げることを選びました。それが、《The Apartment》です。
文化が「根づく」ことだけでは足りない。 その文化が、そこに暮らす人々の“幸せ”や“平和”とどのようにつながっているか。
《The Apartment》は、アーティストと地域、観客と都市のあいだに、一時的でありながら濃密な「関係の場」をつくる試みです。

公演後は、アーティストの方と飲み物をいただきながらアーティストラウンジでお話しをお聞きできるスペシャルな時間もありました。
知らない芸術の世界に好奇心がムクムクとわきあがります。普段お聞きすることのない裏話や、特に海外での活動のお話から垣間見れる文化の違いはとても興味深いものでした。
また、来年の活動を楽しみに待ちたいと思います。
さて、その後、夕方からは城崎国際アートセンターで、片桐はいりさんも出演されている日本と台湾の共同作品『誠實浴池 せいじつよくじょう』を観てきました。日本と台湾の出演者がそれぞれの言語で演じる舞台です。大人のための寓話のようでクスッと笑う場面も。芸術の秋を満喫です。
この秋も、あちこちで芸術祭や展覧会が目白押しですが、たくさんの作品の中で出会えるのはほんの少しです。日々の暮らしの中では気付けないことに出会うチャンスでもあり、自分の感性を豊かにする機会でもあると思っています。
もうすぐ地元亀岡の城址芸術祭がスタートします。すでにこちらを予約しつつ楽しみしています。
Antenna×ヤノベケンジ トークセッション 「森で会いましょう」から続く、それぞれの物語と現在地
どこかでご一緒できますように。