「四君子苑 北村美術館」見学会

date_ 2018.10.18

category_ フォルマと行く、名建築見学

location_ 京都市上京区

四君子苑(しくんしえん)北村美術館(国有形登録文化財) とは

北村謹次郎の旧邸「四君子苑」は、京都市上京区河原町今出川の東に位置し、鴨川に面して正面に如意ヶ岳の大文字を望みます。この辺りは古くから宮家や摂家が競って別荘を営んだ場所でもあります。

昭和の数寄者と言われた北村謹次郎は両親の影響で茶道に親しみ、美術品の蒐集などをして審美眼を磨き、自らの美意識の結晶というべき住まいをこの地に築きました。

建物は茶室と母屋に分かれています。茶室(珍散蓮)は京数寄屋の棟梁、北村捨次郎が手がけました。母屋は戦後進駐軍に接収され改造されたため、昭和38年に吉田五十八の設計で建築され、庭は佐野越守(えっしゅ)により現在の姿に変わりました。

四君子苑の名は、菊の高貴、竹の剛直、梅の清冽、蘭の芳香を四君子と讃える中国の風習に由来しています。菊、竹、梅(むめ)、蘭の頭文字をつなげると「きたむら」になること、またその品位風格にあやかることを願い自ら命名したとのことです。

見学レポート

表門から露地へ

ゆるく上り左に進みます、進行方向右には寄付が見え、露地を進むと軒の低い屋根に覆われる形の外土間に突き当たります。植栽との縁は延べ石で領域が分けてあり、柿の木が実をつけている真っ最中です。延べ石の上に柿が鎮座していました。置かれたのか落ちたのか、演出の趣向なのか、そんなことを考えるのも面白いです。

玄関を入ると暗い空間に天窓からぼんやりとした光が拡散しています。柱や天井の化粧梁も煤色で葭簀天井の凹凸がかろうじて認識できる明るさです。この玄関ホールを起点にして、茶室(昭和19年築)と母屋(昭和39年築)の入り口が分かれています。玄関土間からは路地から見えた寄付の待合までの動線があります。

鞘の間から立礼の間へ

立礼席とは椅子に腰かけてのお点前形式です。応接室として使われていたらしく和室にソファがありますが、床の間や吊り棚の高さは座る高さに合わせてあるような気がしました。室の後方には簡素なベンチがあり、これはお付の人が座る場所らしいです。ここからの庭の眺めも心地よいものでした。縁側にあたる場所は土間になっておりそのまま庭へと続く趣向です。

土間は片方に壁があり簡素な屋根がかかっていて、囲われておらず吹きさらしの土間です。壁もところどころ開放されていて北庭と南庭が其々に楽しめます。人の動きに合わせて見え方が変わる効果がこの壁一つで出来ていることが面白い仕掛けと感じました。領域をこのように分節することで豊かな景色を創れると思いました。

珍散蓮(ちんちりれん)、広間(看大)

飛び石を抜けると小間(珍散蓮)と呼ばれる二畳台目、中板入、下座床の茶室があります。土間からの入口、庭からの入口が広縁につながっています。この広縁は池の上に張出すように建っていて、屋形船のような趣です。柱の下には池の中にある春日石が支えています。趣をより顕著にするための楽しい考えです。

ここから庭の全貌が見渡せます。ここに至るまで、庭を部分的に楽しませてもらいここですべてがわかるという演出でしょうか。外のような内、内のような外から「珍散蓮」へと至る設えは、自然と人の心の動きに呼応するような構成だと思いました。所謂、中間領域があることでそこに新たな機能が生まれ、外と内の質の純度が高まる気がします。

そして広縁から広間に行く障子が両面組子となっていますが、紙を張り替える際には框組の上部分が外れて。組子毎引き抜ける仕掛けが施してあります。(ガイドさんがおもむろに建具を外したのにはびっくりしましたが意図がわかると納得でした。)

広間「看大」は字の通り 東の大文字を看る事が出来るので名づけられたようです。今回は秋の見学なので建具は障子や襖でしたが、夏には葦戸に付け替えられて籠に入っているかのような心地よさと聞きました。庭の木々の新緑の色、水面の煌めき、葉陰の揺らめきが葦に映る情景が想像され、夏仕様も体感してみたいと思いました。

母屋の設計、吉田五十八について

数寄屋建築を基礎にして近代建築を追求し、近代数寄屋を確立した建築家です。近代建築への憧れをもちつつ欧州へ渡るが、実物の近代建築に幻滅し、歴史的な建造物を見て感銘を受けたようです。しかし、民族の歴史や成り立ちが違うのに欧州の真似で近代建築を目指しても追いつけないと感じたようです。民族の血による近代建築を目指すという視座のもと、伝統的な日本建築を近代化することで新しい日本建築が生まれるという事を目指されたと言及されています。(数寄屋十話より)

母屋

再び玄関ホールへ戻り、廊下から中庭の石造を見て母屋の居間に入ります。明るさと空間ののびやかさが印象的です。北村謹次郎家族の生活空間、そして吉田五十八の近代数寄屋建築空間が見事に融合していました。

母屋の居間は、中間領域(内と外との間の空間を感じさせる場所)としての意味付けがあるようですが、珍散蓮(小間/茶室)前の中間領域は外寄り、こちらの居間は、内の領域を更に内に取り込んだような感覚がします。この感覚が非常に好きです。アルミサッシのコーナー柱をなくしたからこその効果。見せたい方向に自然と視線が誘導される心地よさを感じます。

居間につながる上の間と下の間へ、式台を踏んで間へ至る、ここも人の心の動きを考えるかのような設計です。性格の異なる間同士をどうつなげるか、そこに思慮がなされていると感じました。合理的に考えると一番に不要と削られるような部分に大切なものが潜んでいる気がします。

秘密は目地の意匠

上下の間を仕切る欄間付きの襖、特に見たかったのが敷居と鴨居の納まりです。実物を見て興奮!開け放つと元から一室だったのか、そう見えるほどに違和感無い納まりの秘密。「棹縁天井はやめた」と読んだ気がしましたがこんな事になっていたんですね。

仏壇

上の間にある仏壇。見事に空間に溶け込んでいました。閉まっていれば存在が気にならず、開けると、清々しい祈りの場が現れます。

見学を終えて

個人的には、建築写真で見るのとは違う空間体験が非常に面白いし興味がつきません。時間が全く足りませんでした。写真撮影が禁止なのでスケッチしながら見学していたら、おそらく一日いれただろうと思います。

見学後は、ヴォーリズ建築のバザールカフェで昼食でした。ものづくりをする人ばかりの参加で、建築ばかりの話でないところの雑談も楽しかったです。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

秋の公開 2018年10月16日(火)~10月21日(日)

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北村美術館
http://www.kitamura-museum.com
四君子苑
http://www.kitamura-museum.com/shikunshien.html